サーキットフェスのつくりかた

サーキットフェス。複数会場で開催するライブイベントに、この名前が当てられるようになったのっていつ位からなのかな。今日はサーキットのつくりかた、という題目で書いてみることにします。つくりかた、といっても個人で企画する僕の場合なので、音楽関連会社が絡んでたり、有名ミュージシャンがレーベルと主催してたりするのはこの限りではありません。

企画するのはやっぱり大変。1会場のイベントだと、3~5組くらい出演者が居れば形になるけれど会場の数だけ出演者を集めなくてはいけない。それなのにどうしてそこに踏み込むことにしたのか、というところから。

僕がライブ企画を始めた原点はふたつあって。

まずは自分の音楽を一人でも多くの人に伝えたい、ということ。良い音楽をやってるつもりがあるので、一人でも多くの人に観てもらえる良いイベントを組めたら、という想いから。でも一番大事なのは、誰かを巻き込んで企画するに値する「良い音楽」を自分がやれてるかどうか。

そして、もうひとつは、もし誰かを誘ってライブに来てもらうなら、自信をもって人にお勧めできる日にしたい、ということ。自分がその日の責任をとれるようにしたい、とも言える。もちろんライブハウスに任せる形を否定するわけじゃない。想いのこもった良い日に巡り合わせてもらえたこともたくさんある。だけど、ただバンドをかき集めただけの哀しい日、なんてのに巡り合うことも残念ながらたくさんあったから、せっかくライブイベントに来て欲しいって誘うのに、「自分たちだけ観て!あとはよく知らない、、運任せ!」って誘い方をするのはどうしても心苦しさが抜けなかった。だから自信もって人を誘える音楽を集めて企画出来れば良い!と思って始めたのがきっかけ。

ということで始めたのが、僕がもともと1会場で続けていた「Live世界の砂場から」という企画。ずっと良いイベントを続けてた自負はあったんだけれど、もっと知られて良い日なんじゃないかっていう気持ちがいつもあって。だから企画が大きくなれば、反応してくれるお客さんも多くなるんじゃないかって思うようになった。あと、反応してくれるバンドも増える。みんな祭りが好き。

僕がサーキットフェスの開催に踏み切ったのは、そんななんとも安易な理由から。馬鹿だからできたんだって今でも思う。あれこれ考えてたら一回目を踏み切ることなんてできなかったと思う。

でも開催してみて初めて感じられたこと、思い思いの音楽を選んで回って一日を過ごせるサーキットという形式には通常のライブイベントにはない解放感みたいなものがあって、二回目に続けようと思えたのはそれも大きい気がしています。 

今回の「CIRCUIT世界の砂場から」は34組の出演者がいます。自分もソロとバンドで出演するから誘ったのは32組だけれど、本当に気が遠くなるしどうやってここまで形にできたのかもう思い出せないし、むしろその過程はあんまり思い出したくない。フライヤーとタイムテーブルを眺めて、本当に良いイベントだと改めて確信するけど、もう一回やれと言われると吐きそうになるからくれぐれも言わないように。

このサーキット、今年は三回目で、良いイベントと聞いていたのでオファー嬉しいです!みたいな返事をもらえたり、やっぱり三年良いものを作り続けてきたことが少しづつでも浸透しているのはとてもうれしかった。ずっと手探りで来たけど、これは僕に協力してくれた出演者の皆のおかげです。あと、毎年来てくれてるお客さんたちのおかげ。

 だから今年も是非安心して遊び来てほしい。今年も最高を更新してみせたいです。

前置きが長くなったけれど、言いたいことはこの前置きで大体網羅された気がする。。もうここで終わりにしようかと思ったけど・・せっかくなので書いておくことにします。興味のある人は続きもどうぞ。

 

 

【サーキットフェスのつくりかた】

・会場の確保

サーキット形式のライブでは、ライブハウスを確保することからスタートします。(この段階でいつでもスケジュール空けるぜ!ってバンドがいてくれると鬼が島に出向く桃太郎のような心強さを得ることができますが、みんな忙しいからそんな約束はなかなかできません。)ライブハウスにはだいたい日付を指定して空けといてもらうことができる「仮押さえ」ってシステムがあるので、問い合わせて条件等を確認します。「仮」なのでいつまで仮でいけるかを聞いて、その期限までに確定の返事をするんだけど、信頼関係みたいなものもあるので期限近くなってからのキャンセルは控えたい。予約できるのは一年前からとかになってるケースが多くて、人気の箱は土日だと本当にそれくらいリードタイムが必要になります。1会場だけならまあ3~4か月でも空いてるところはあるんだけど、4つ合わせようと思うと実際自分も年明けくらいからは動いてた気がします。

ライブハウスのレンタル料金も会場と曜日によって違っていて、総じて土日は高く大体10万~20万で推移するイメージ。ここも場所によっては力のあるレーベルとかの声かけだと安くなったりするのかな!いいなあ!!という気持ちですが僕は無力なので言い値でイイネしてます。でも、いろんな機材とか人件費とかライブハウスは維持にお金がかかるのも本当だとは理解してるのであんまり無理は言ってないですね・・。

 

・出演オファー

多くの個人イベンターが命を落とすのはここです。理想と現実、天国と地獄です。

まずバンドは国。国が違えば豚肉を食べないくらいのカルチャーギャップは平気で発生します。具体的に言うとオファーをしても返事が返って来ない現象です。もしくは途中までやり取りしてても音沙汰がなくなったりします。

ホームページのCONTACTは何のためにあるのかという問いに対して、「釣り堀」という答えを見出したのでお伝えすると、小さな案件は無視、または大きくなるまで無視ということなのかな、と理解するに至りました。もちろんそこらへんちゃんと対応してくれるバンドもたくさんいますが、結構辛いバンドもありますね。。3markets[ ]かざまくんにこの辛さを相談した時に「みんな忙しいから仕方ない」という返答をもらったんだけど、確かにバンドの仕事は曲を作ること・音楽を演奏することだから、興味のないものに対応する義務はない、という考え方でかみ砕いて理解できる気がしてきています。相手は企業じゃなくてアーティスト・・。それで失うものが大きくないならそれでもいいのかなって。もちろんその後の印象とかは知らないし、社会的にどうなのかもしりません・・。

ということで色々レンガ大の異物を飲み込んで理解するに至ったんですがレーベルがそれをやってる場合もあるので、再び悲しみに暮れることになります。僕は返事が途中で途絶えてしまい、ライブ会場に出向いて「来ちゃいました・・」とメンヘラ彼女みたいなアクションをしたことがあるので、とある界隈には恐れられているという噂を自分で立てます。

この話いくらでも出てくるのでこの辺で止めますが、このあたりでイベントの期日と戦って心が折れてしまうイベンターの人が多いですね。想いを込めれば込めるほどに病みます。かわいそう。

極論、ミュージシャン側は出演出来なくたっていいので、YESとかNOとか、検討に時間が○○頃までかかる、とかなにかしら返事をしましょう・・。ってかして。ちなみに今年は僕もまだ返答を待ってるバンドがいます。

あと、これからイベントやろうかなって人も、ただ音楽が好きなだけで居たい人はやらないほうがいいと思う。。。

そして次。お金もあります。ライブに出演してもらうには対価が必要で、それがお金なのか、その価値なのか、両者を天秤でかける形になります。そして誰に声をかけるかで変わってくるし、誰が声をかけるかでも変わってきます。ちなみにお礼の仕方にはチャージバックという形で動員のあった人数に応じて支払うパターンと、いくらかの保証という形であらかじめ支払額を決めるパターンがあります。(あとはノルマ○○枚ヨロシク!ってオファーの仕方もあります。)

僕の場合は、レーベルとか所属の兼ね合いで保証要求を頂くケース以外は、遠方からの出演者に約束しているのは交通費の足しにしてもらえる程度、というのが正直なところです。地元についてはそれ自体出来てない。その辺は大成功してできるだけたくさん還元していきたいのだけれど、なかなか十分には返せていないのが毎年心苦しいところです。それでもみんなこの日を良いイベントと信じて出演してくれてるので、なんとしても出演してよかった!と思える価値ある日にしたい。実際もう最高のラインナップなのでそこは安心してるけど、それは当日たくさんのお客さんたちに見届けてもらえて初めて証明されるから、そう出来るように精一杯努力したいです。

ちなみに某大手サーキットは出演希望者を募って、遠方・地元を問わず希望者側が参加費を払う、という形で収入が担保される魔法のシステムですが、あれはやっぱりそれだけ大いなる力が発生してるからできることなのでそもそもの枠組みが違いますね。。

 

 ・その他フライヤー、ホームページ、グッズ作成等

そのほかはフライヤー、当日のリストバンド、タイムテーブルしおりを作ってもらって印刷したり、グッズ作ったりというので経費がかかります。これも誰にお願いするかで変わってくるけれど僕は古くから付き合いのある方に毎年無理を言ってお友達価格で対応してもらっている感じです。ホームページはtumblrのほんとう表面昨日だけしか使えない自分が試行錯誤しながら作っているので経費かかってないけど、これも依頼してたらお金結構かかりますね。。

当日の運営スタッフはボランティアで基本お願いしているからそこは現状ほぼ0で運営できているのだけれど、やはりなんやかや大きいのはライブハウスの会場代と、出演者へのお礼、ということになります。

 

・収支計算

あとはフード出店してもらってたり、グッズで利益が出たらその分を運営費の足しにして・・とかそういうのがありますが、今年は大体ざっと90万円くらいの経費が掛かる見込みです。なのでそこから試算すると、今回のサーキット運営を黒字にするためには単純に260人くらいのお客さんが必要。34組出演者がいるから単純計算で一組あたり7.56人。これだけならまだ現実的な気もするんだけれどサーキットは出演者も多いので目当てがかぶりがち。あと、素晴らしい出演者がそろってても、名古屋ではまだあんまりライブやれてないバンドも居たりしてそこまで簡単ではないハードルだとおもってます。自分がバンプオブチキンだったらな・・ってよく思うんですけど残念ながらバンプじゃないので企画者の自分がまず頑張らないといけない。オファーする基準を集客力に特化すればもうちょっと組み方もあるのかもしれないけど・・それだと自分がやる意味なくなっちゃうのでね。。

 

なのでここまでたどり着いた方々には、何卒のご来場と、または周知をお願いしたい(出演のみんなもぜひ今一度できる限りの協力を)、、というのがささやかなお願いごとになります。最高の日だってことだけは約束したいので、全く楽しめなかったってことがもしあったらお金はお返ししたって良いって思ってます。

 良い日が正当に評価されてほしい、とおもう。別に全バンドメジャーデビュー間違いなし、とかじゃないです。結果的にそっちへ行けるバンドもいます。でも、基準はそこじゃない。とにかく良い音楽がこの日に詰まってます。運営スタッフの皆も3年目の人達もいてくれてるし、ie goricoとフジッコさんのフード出店と行き交うお客さんたちも相まって、このサーキットにしかない幸せな空気感みたいのがきっとあります。

11月12日(日)、名古屋新栄。ぜひこの一日を任せてもらえたらうれしいです。

 

 

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□11月12日(日):名古屋 新栄 APOLLO BASE/Live & Lounge vio/SiX DOG/parlwr
「Circuit 世界の砂場から'17」
【Live act】 asayake no ato / イトカムトビコ / The Cheserasera / the coast / シンガロンパレード / Suuuuuuuu / 鈴木実貴子ズ / 砂場 / 3markets[ ] / スロウハイツと太陽 Sentimental boys / The Songbards / toitoitoi / とけた電球 / 突然少年 / 中村佳穂 / 夏目栞 / Half time Old / paionia / batta / THEハブ人間 / 原田茶飯事 / ハルラモネル / ハンブレッダーズ / 百長 / 日向文 / phonon / ベランダ / ミヤザキナツキ(砂場) / モケーレムベンベ / Monaca yellow city / Mona Monica / MONO NO AWARE /
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